その渋い低音ボイスと圧倒的な存在感で、今や誰もが知る存在となった津田健次郎さん。アニメ『呪術廻戦』の七海建人や『ゴールデンカムイ』の尾形百之助、さらにはドラマ『最愛』や映画『沈黙の艦隊』など、彼の名前は常に話題作と共にあります。
50代を迎えた今、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの津田さんですが、実は彼が「遅咲きのスター」と呼ばれていることをご存知でしょうか?長い長い下積みを経て、近年ついに大ブレイクを果たしたのです。
この記事では、津田健次郎さんがいかにして苦難の道を乗り越え、今日の輝きを手に入れたのか。その遅咲きの軌跡と、人気が爆発した理由を、徹底的に深掘りしていきます。
苦難の始まり:夢に破れ、どん底を見た20代

映画監督を諦め、役者の道へ
津田さんの物語は、映画監督を夢見た学生時代から始まります。明治大学で演劇学を学び、映画サークルで活動するも、脚本が書けないという壁にぶつかり挫折。しかし、その過程で「演じること」の面白さに目覚めます。
円・演劇研究所2年間の養成課程は修了しましたが、実際の演劇集団 円の入団試験では不合格。それでも役者への夢は諦めきれず、大学卒業後はフリーの舞台役者として活動を始めました。
1995年、24歳でアニメ『H2』の野田敦役で声優デビュー。同年、映画『君を忘れない』で俳優としてもスクリーンに立ちます。華々しいスタートに見えますが、現実は甘くありませんでした。仕事は全く安定せず、経済的にはどん底の日々。津田さん自身、「パンを買うのにも悩むほどの貧乏生活」だったと振り返ります。居酒屋やコンビニのバイトをしながら、来る日も来る日もオーディションに挑む毎日でした。
「世の中から必要とされていない」と感じた下積み時代

津田さんの20代は、「仕事がまったくなく、本当につらかった」という言葉に集約されます。
声優デビューはしたものの、それがすぐに次の仕事に繋がるわけではありません。舞台や端役で食いつなぐ日々。30代前半までバイト生活は続き、たまに声優の仕事が入っても収入は雀の涙。「怖くてバイトを辞められなかった」と語るほど、常に不安と隣り合わせでした。
どれだけオーディションを受けても結果は出ず、精神的にも追い詰められていたことでしょう。それでも彼は、「諦めなければ、まだ負けてはいない」という執念で、演技への情熱の火を絶やさなかったのです。
2000年代に入り、『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』の海馬瀬人、『テニスの王子様』の乾貞治といった人気キャラクターに恵まれます。しかし、これらの役も彼を一気にスターダムへ押し上げるまでには至らず、地道に経験を積み重ねる日々が続きました。
遅咲きの花が開花!ブレイクまでの道のり

人生を変えた「出世作」との出会い
長い下積みを経た津田さんに、大きな転機が訪れます。それは2020年、NHK連続テレビ小説『エール』のナレーションでした。
日本中のお茶の間に響き渡った、あの落ち着きと深みのある声。この仕事が、津田健次郎という名前と声を、一気に全国区へと押し上げたのです。業界内での評価も急上昇し、ドラマやアニメの主役級のオファーが舞い込むようになりました。

そして2021年、その人気を決定的なものにしたのが、アニメ『呪術廻戦』の七海建人役でした。クールでダンディな「ナナミン」のキャラクターと、津田さんの渋い声が見事にシンクロ。若い世代を中心に「ツダケン」ブームが巻き起こり、同年の声優アワードでは、ついに主演男優賞を受賞。誰もが認めるトップ声優の仲間入りを果たしました。
同じ頃に出演したドラマ『最愛』での刑事役も、俳優としての彼の評価を確固たるものにし、SNSでは「ツダケン」がトレンドを席巻する社会現象となったのです。
キャリアを加速させた所属事務所の移籍
彼のキャリアを語る上で、所属事務所の移籍も欠かせません。デビューからいくつかの事務所を経て、ブレイク直前の2021年にアンドステアへ移籍。これは、声優業だけでなく、俳優、そして映像監督といったクリエイティブな活動の幅を広げるための、戦略的な決断でした。
「立ち止まることなく、様々なチャレンジをしていきたい」。その言葉通り、新たな環境が50代での大ブレイクを力強く後押ししたのです。
なぜ津田健次郎は50代で急に人気が出たのか?

津田さんが50代でこれほどの人気を得た理由は、決して一つではありません。長年積み重ねてきたものが、最高のタイミングで噛み合った結果なのです。
1. 声に年齢が追いついた「イケオジ」の魅力
彼の最大の武器である低音ボイス。50代になり、そこに人生経験からくる渋みと深みが加わりました。「年齢を重ね、声に渋みが追いついた」と評されるように、七海建人のような大人のキャラクターに圧倒的な説得力を与え、「イケオジ」として若いファンからも熱烈な支持を集めています。
2. ジャンルを超えた活躍とメディア露出の急増
声優業にとどまらず、ドラマ『ラストマン』では青年期から老年期までを1人で演じきり、その熱演はSNSで世界トレンド入り。監督業や写真集の発売など、八面六臂の活躍でメディアへの露出が急増し、次々と新しいファンを獲得しています。
3. 30年の芸歴が証明する、揺るぎない演技力
今の成功は、決してポッと出のものではありません。30年という長い芸歴の中で、どんな役にも真摯に向き合い、磨き上げてきた技術があります。『遊☆戯☆王』や『テニスの王子様』で培った土台があったからこそ、『エール』や『呪術廻戦』での花が開いたのです。
4. SNSが巻き起こした「ツダケン」旋風
彼の魅力を爆発的に拡散させたのがSNSの力です。作品が放送されるたびに「ツダケン」がトレンド入りし、その声や演技、人柄についての投稿が溢れかえります。『情熱大陸』や『徹子の部屋』への出演も、彼の人間的な魅力を広く伝え、ブレイクをさらに加速させました。
まとめ
津田健次郎さんの50代での大ブレイクは、一夜にして起きた奇跡ではありません。それは、誰にも認められない不遇の時代を、「諦めない」という強い意志で乗り越えた、30年間の努力の結晶です。
パンを買うお金にも困ったバイト生活。そこから這い上がり、『エール』や『呪術廻戦』といった出世作と出会い、ついに時代が彼に追いつきました。長年の経験で培った演技力、深みを増した声、そしてジャンルを恐れない挑戦心。その全てが、今の津田健次郎というスターを作り上げています。
彼の物語は、私たちに教えてくれます。諦めずに情熱を燃やし続ければ、遅咲きの花は見事に咲き誇るのだと。これからも進化を続ける「ツダケン」から、ますます目が離せません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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