日本の音楽シーンで、静かだけれど確かな存在感を放ち続けている夫婦デュオ、ハンバート ハンバート。
2025年のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の主題歌担当、さらには紅白歌合戦への初出場も決定し、「ここに来てなぜ？」と驚いた方も多いのではないでしょうか。
決して派手なプロモーションをしてきたわけではない彼らが、なぜ今、朝の顔として選ばれたのか。そして、多くの人を惹きつける彼らの音楽は一体「どこがいい」のか。
今回は、そんな彼らのブレイクの背景と、一度聴くと抜け出せなくなるその魅力について、じっくり紐解いていきます。
なぜ朝ドラ『ばけばけ』の主題歌に選ばれたのか？
まず一番の疑問、「なぜ彼らが朝ドラの主題歌に？」という点から見ていきましょう。
結論から言うと、ドラマが描こうとしている世界観と、ハンバート ハンバートの音楽が持つ空気感が「運命的」と言えるほど合致していたからです。
「ありのまま」を求めた制作陣
朝ドラ『ばけばけ』は、妖怪や民話をモチーフにした物語。主人公のトキとヘブンが織りなす「ありのままの空気感」が作品の核となっています。
NHKの制作陣は、この飾らない世界観を表現できるアーティストを探していました。そこで白羽の矢が立ったのがハンバート ハンバートです。制作陣が彼らの代表曲「おなじ話」を聴いた瞬間、「これだ！」とオファーを決めたというエピソードがあります。
公式コメントでも「二人のありのままの空気感を飾らずに歌にしてくれる方にお願いしたい」と語られている通り、彼らの日常を優しく包み込むようなハーモニーこそが、ドラマに必要な要素だったのです。
「大物ありき」ではない、新鮮な選択
近年の朝ドラ主題歌といえば、あいみょんや米津玄師といったチャートを席巻する大物アーティストが定番でした。
しかし今回、あえてメジャーヒットの規模感とは異なる彼らを起用したことで、ドラマ全体の「地に足のついた」イメージがより鮮明になりました。この選択は、視聴者からも「新鮮でいい」「ドラマにぴったり」と非常に好意的に受け止められています。
なぜ今、これほど注目されるようになったのか？
結成から27年。1998年のスタートから地道に活動を続けてきた彼らが、なぜ「今」このタイミングで脚光を浴びているのでしょうか。
そこには、時代の変化と彼らのスタイルが見事にマッチした背景があります。
ポストパンデミック時代の「癒やし」
大きな理由の一つは、世の中が「癒やし」や「本物」を求め始めたことです。
ここ数年で社会のあり方が大きく変わり、派手なエンターテインメントよりも、日常の小さな喜びや、心の痛みに寄り添ってくれる素朴な音楽が再評価されるようになりました。
夫婦で3人の子供を育てながら、生活と地続きの場所で音楽を紡ぐ。そんなハンバート ハンバートのライフスタイルそのものが、現代人の憧れや共感を呼んでいるのです。
昭和フォークやルーツミュージックの復権
また、2020年代の音楽シーンでは、昭和フォークのレトロな雰囲気やカントリーミュージックの要素が見直されています。
アイルランドの伝統音楽バンド「The Chieftains」のカバー経験もある彼らは、ルーツミュージックを現代的に表現する名手。そのサウンドは懐かしくも新しく、サブスクリプションサービスなどを通じて、Z世代を含む若い層にも「エモい」と刺さっています。
ハンバート ハンバートの「どこがいい」？魅力を深掘り
では、具体的に彼らの音楽の「どこがいい」のでしょうか。ファンを虜にするポイントは大きく分けて2つあります。
1. 「ひょうひょうと」歌われる切実な歌詞
彼らの楽曲（佐藤良成さん作曲、佐野遊穂さん作詞のコンビネーションなど）の大きな特徴は、コンプレックスやみじめな気持ちといったネガティブな感情を、決して暗くならず「ひょうひょうと朗らかに」歌い上げる点です。
例えば、代表曲「おなじ話」では繰り返される日常の機微を、「虎」では吃音の経験を元にした内省的なメッセージを描いています。重くなりそうなテーマでも、彼らが歌うと不思議と「なんとかなるさ」と思えてくる。人生のアップダウンを肯定してくれるような温かい優しさがあります。
2. 夫婦ならではの「ゆるまない」ハーモニー
もう一つの魅力は、やはりその歌声です。
夫婦デュオならではの、リラックスしてのびのびとした歌い方。お互いの呼吸を知り尽くしたハーモニーは、聴く人を映画のエンディングを見終わった後のような、心地よい余韻に浸らせてくれます。
「正しく歌う」ことよりも「音に導かれるままに言葉を紡ぐ」ようなスタイル。この妥協のない、けれど力みのない創作姿勢が、多くのファンに「本物の音楽」として信頼されている理由でしょう。
紅白出場がもたらす新しい風
2025年の紅白出場決定は、朝ドラ主題歌「笑ったり転んだり」の評価が決定打となりました。
SNSでは、ドラマプロデューサーから祝福のコメントが寄せられるなど、制作サイドとの絆の強さも話題に。放送開始後、主題歌の歌詞に対して「なぜか泣けてくる」「すごい内容だ」といった声が相次ぎ、ドラマの視聴率や満足度にも大きく貢献していると言われています。
SpotifyやYouTubeでの再生数も急増しており、これまで彼らを知らなかった層が、その魅力に気づき始めています。
まとめ：時代が追いついた「本物の温かさ」
ハンバート ハンバートが今注目される「なぜ」の答えは、彼らが27年間変わらずに続けてきた「生活に根ざした音楽」を、今の時代が切実に求めたからだと言えるでしょう。
「どこがいい」のかと問われれば、飾らないハーモニーと、痛みさえも包み込む歌詞の優しさにつきます。
朝ドラや紅白をきっかけに彼らを知った方は、ぜひ一度、その楽曲に耳を傾けてみてください。きっと、あなたの日常を少しだけ温かくしてくれる「お守り」のような一曲に出会えるはずです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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